地域で支え合う介護コミュニティ新聞
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コラム     本の紹介     2008年1月6日更新


第2回東京都脳卒中市民公開セミナー
      「脳卒中の急性期医療」

平成18年10月1日
場所:日本教育会館一ツ橋ホール

社団法人日本脳卒中協会東京都支部


総司会 後藤淳(東京都済生会中央病院神経内科医長)


講演
   
座  長 北川泰久(東海大学八王子病院院長)



「脳卒中の症状と発症時の対応〜早期受診のために」

          神谷達司(岡山大学神経内科助教授)

 現在の日本人の3大死因は、第1位が悪性新生物(がん)、第2位が心疾患、第3位が脳血管疾患(脳卒中)です。

 脳血管障害の定義は、「脳のある部分が虚血あるいは出血により一時的または永続的に障害される場合か、脳の血管が一時的に侵される場合、またはこの両者が混在するすべての疾患」です。

 脳卒中(stroke)は、「脳梗塞(のうこうそく)、脳出血、くも膜下出血を主に意味し、またそれらの総称」です。

 いまとても話題になっているメタボリック・シンドロームがあります。これは脳卒中に非常にかかわりが大きく、脳卒中にかかりやすい症状です。
 メタボリック・シンドロームは、ウエストが男性の場合、95センチ以上、女性は90センチ以上で、血圧、空腹時の血糖値、高脂血症の数値が表のように2個以上ある症状をいいます。
 

メタボリック・シンドローム(内臓脂肪型肥満)
腹部肥満(ウエスト径) 男性=85cm以上
女性=90cm以上
上記のほか、下記の条件が2個以上あるものをメタボリック・シンドロームといいます。
血圧
収縮時血圧130mmHg以上か、拡張期血圧85mmHg以上
空腹時の血糖値
110mg/dL以上
高脂血症

血清中性脂肪150mg/dL以上か、血清HDLコレステロール値40mg/dL未満


 メタボリック・シンドロームは内臓脂肪がたまってくる病気で、動脈硬化が起こり、脳卒中や心筋梗塞の予備軍になってします。メタボリック・シンドロームは、脳卒中に非常にかかわっています。

 肥満症
(脂肪細胞機能異常によるもの)
メタボリック・シンドローム

脳卒中
心筋梗塞


 脳梗塞は、治療の進歩によって亡くなる方は少なくなっています。しかし、高血圧が増えており、これに伴い脳梗塞になる方も増えています。

 65歳以上の寝たきりになった方(31万6千人)の主な原因は、脳血管疾患が37.9%で最も多い。次いで認知症、心臓病、骨折・転倒と続いています(厚生統計協会・国民生活基礎調査、平成10・11年)。

 脳卒中の患者数は右肩上がりで増えています。これは、血圧が高い人が増えるとともに脳梗塞の人も増えているということです。
 治療によって亡くなることは少なくなっていますが、発症は高血圧の方が増えるに伴って、脳梗塞の方が増えているということです。

 脳血管障害(脳卒中)の患者数は約170万人です。高血圧疾患、糖尿病、高脂血症に次いで4番目に多いです。
 高齢化に伴い2020年には約300万人に増えてしまうのではないかといわれています。
 脳血管障害は約30兆円の医療費のうち、単一疾患として最も多い約2兆円を使っています。国民医療費の約半分を占めているのは65歳以上の高齢者です。その65歳以上では、脳卒中に約40%が費やされています。これを減らすには、脳卒中、寝たきりになる人を減らすことです。それには発症時の対応が大切です。

 脳の重さは、1300グラム〜1500グラムあります。体全体の2%です。70キロの人ならば、1400グラムぐらい。その脳に全血液の20%が行っています。2%の重さの脳に、20%の血液が行っているということです。

脳血栓症 血管の内腔がだんだん細くなり血管をふさぎます。
脳塞栓症 心臓などからの塞栓(血塊)などが脳血管に詰まることです。血塊とは血液や脂肪、組織などのかたまりです。
くも膜下出血 脳動脈瘤や脳動静脈奇形血管が破れ、くも膜下腔に出血する病気です。


 脳梗塞は、自宅で様子をみとるどんどん悪くなってしまいます。脳梗塞の症状かなと思ったら、自宅で様子をみるのはやめて、病院で様子をみるようにしてください。
 脳梗塞の発症は朝方に多く、男の人も女の人も血圧の高い人の方が発症は多いです。
 アメリカ人と日本人の大きな違いは、アメリカ人は心筋梗塞が多く、日本人は男性も女性も脳梗塞が多いです。

 脳血管障害を防ぐには、危険因子である高血圧や糖尿病、高脂血症、肥満などをコントロールすることがなによりも大切です。

脳血管障害の危険因子
1.
2.
3.
4.
5.
6.
高血圧
糖尿病
高脂血症
加齢
性別(女性より男性が多い)
肥満
 
7.
8.
9.
10.
11.
12.
飲酒
喫煙
Ht値の上昇(脱水など)
たんぱく尿
家族歴
ストレス

脳卒中の前兆
1.
2.
3.
めまい
マヒ
しびれ
  4.
5.
6.
頭痛
目のかすれ
一過性能虚血発作(TIA)

 予防していても、脳卒中の前兆があったら、すぐにお医者さんのことろに行くことです。病院で検査を受けること。
 しびれは、寝違えたかと思ってしまうかもてれませんが、片側にあったら、前兆と思ってください。脳梗塞の前兆です。また、頭痛とか首の痛みを感じたら、すぐに脳梗塞の症状ではないかと考えることが大切です。

脳梗塞の時間的分類
発症24時間以内に神経症候の完全に消失したもの 一過性脳虚血発作(TIA)
発症24時間以降3週間以内に神経症候の完全に消失したもの 可逆性虚血性脳神経障害(RIND)
発症3週間以降まで神経症候の残るもの 脳梗塞


 一過性脳虚血発作とは24時間以内に神経症候が消滅することです。しかし、症状がなくなっても、病院に行くのをやめないようにしてください。 
 脳梗塞にならないようにするには、予防することが大切ですが、症状が出たら遠慮することはありません。救急車を呼んでください。脳梗塞ではないかということで病院に行ってください。病院では、いろんな検査をしてくれます。



講演「脳卒中の急性期治療〜脳梗塞の血栓溶解療法を中心に」
      植田敏浩(東京都済生会中央病院脳血管内治療医科長)

 脳卒中は、なぜ緊急治療が必要なのか。脳梗塞の超急性期の最新治療とは、くも膜下出血の最新治療とは、脳卒中になったらどんな病院へ行けばいいのか。これらについてお話します。

 「脳卒中でよい治療を受けるためには」。これは非常に大切なことです。第一に脳卒中の正しい知識を持つこと、ご自身のため、ご家族のためにも必要です。そして、できる限り早期に専門病院で受診することです。おかしいと思ったらすぐに救急車を呼んで、早期に適切な治療を受けることで重要です。

 脳梗塞になる人は、2倍3倍と増えています。亡くなる人は増えていませんが、いったん脳卒中を起こすと、特に脳梗塞の場合は完全に治るのは20%ぐらいの人で、70%余りの人は麻痺などの後遺症が残ったり、介護が必要になります。長期寝たきり(3年以上)の原因は約4割の人が脳血管障害です。後遺症がとても怖いということです。

 脳卒中の多くは動脈硬化の病気です。
 動脈硬化が原因で起こる病気は、脳卒中をはじめ、狭心症、心筋梗塞、腹部大動脈瘤、腎硬化症、閉塞性動脈硬化症があります。

 脳卒中は、動脈硬化が原因で全身の血管にコレステロールなどがたまってしまい、そこから血管が詰まってくるような病気です。動脈硬化で脳卒中も心筋梗塞も起こしやすいのです。

 脳梗塞、心筋梗塞はよく比較されますが、心臓の場合は激しい胸の痛み、呼吸困難などが起きますので、命の危険を感じて救急車を呼び、すぐに病院に行くのですが、脳卒中の場合は手がしびれる、動かない、言葉がおかしいなどの症状なので、様子を観察される方が非常に多いです。これが一番の問題ですね。ただちに救急車を呼んで受診されることが大切です。脳卒中は心臓と同じ緊急の疾患です。

 脳卒中なったらどうるするのか。
 昭和40年ごろの脳卒中は、国民の死亡第1位で年間14万人の方が亡くなっていました。そのころは、1〜2週間は絶対に安静にし、寝かせておくことが必要、自動車などで病院に運んでは危険という知識でした。これは昔の知識と思ってください。今では早期の治療とリハビリが必要です。

 これまでの脳梗塞の治療は、点滴治療しかなかった。脳梗塞の進行、再発を防ぐ抗血栓剤・抗凝固剤を使う治療、脳の腫れを防ぐ抗脳浮腫剤を使う治療でした。脳の症状を抑える治療、治す治療はありませんでした。

 新しい治療(超急性期の3〜6時間以内)は、詰まった脳の血管を直ちに再開通させる新しい薬のtPAの点滴、専門的な脳血管内治療(カテーテルの手術)があります。

 発症後、脳梗塞で死んだ細胞の周辺部分は、完全には死んでいません。ここに血液を流すと死にかけた細胞が生き返る可能性があります。手足の麻痺がすぐに回復することがあります。
 脳梗塞は血管が詰まっても、周辺から血液が流れてきます。数時間ぐらいは、周辺の細胞は生きています。そのときに治療するのが大切といわれています。早く治療することが基本です。

 しかし、死んでしまったそこに血液を流すと脳出血を起こし、逆に死亡に至ることもあります。その見極めが非常に大切です。この治療をするのがいいのか、しないのがいいのかの判断が難しいのです。専門病院でないとなかなか分かりません。

 脳卒中の診断、CT検査だけで大丈夫か。
 脳出血とくも膜下出血は、発症直後から異常を確認できます。しかし、数日後、不明瞭になることもあります。
 脳梗塞は発症直後には変化はなく、3〜12時間以上で確認できます。しかし、部位によっては変化はありません。

 急性期脳梗塞に対する血栓溶解療法、tPA静注。
 発症から3時間以内にtPAの点滴を開始します。詰まった血栓のところに流れていき、細胞を生き返らせます。しかし、tPAはすべての脳梗塞に使えるわれではありません。CT(MR)検査と専門医の診断が必要です。重篤な脳出血を生じることもあります。

 発症から3時間と言っていますが、投与開始から3時間以内ですので、実際には病院に来てから診察、検査などで最低1時はかかりますので、2時間以内に専門病院に来ないと間に合いません。救急病院に行ってから専門病院に運ばれてきたのでは間に合いません。

 tPAによる治療ではないカテーテルを使った脳血管内治療があります。
 脳血管内治療とは、マイクロカテーテルという細い管を脳内に挿入してレントゲンの透視像を見ながら、血管内から病変を治療する方法です。頭を切らない治療と思ってください。3時間以内に治療するtPAが間に合わない場合などに使われます。

 くも膜下出血とは、脳動脈瘤の破裂が原因で起こります。症状は、激しい頭痛から昏睡まで、突然死もあります。
 好発年齢は40〜50歳代で、男性より女性が多いです。予後は、死亡、後遺症、社会復帰がそれぞれ3分の1ずつです。
 再出血予防のためには、早期の手術が必要です。手術は、開頭術の脳動脈瘤クリッピング術と脳血管内治療の脳動脈瘤塞栓術があります。

 脳卒中になったらどういったいい病院にかかればよいか。
 神経内科、脳神経外科医が連携するチーム医療が確立されていて、24時間態勢で患者さんを受け入れることができ、MRIやCT検査が迅速に行えるところ。また、tPAの使用実績があることです。そして、早期リハビリから回復リハビリにスムーズに移行できること。脳血管内治療の専門医がいることなどです。
 救急病院には専門医の有無や、診療体制、設備などに大きな格差があります。よく調べて行くことです。

 全国で2200例あります。東京では170例です。少ないですが、いい病院は多いのですが、脳卒中の専門病院に搬送するシステムが確立されていないということがあります。

 脳卒中でよりよい急性期治療を受けるためには、脳卒中の正しい知識を持ち、できる限り早期に専門病院で受診することです。早期に診断し、適切な治療を開始することです。
 急性期の初期治療が重要で、早期治療を始めるほど治療成績はいいです。



シンポジウム

テーマ「東京都の脳卒中急性期医療を考える」

          座長 高木誠(東京済生会中央病院副院長)

(1) 「患者救急搬送の現状と問題点」

          小林一広(東京都消防庁救急部救急医務課課長補佐)

 東京都消防庁の管轄区域は都全域ではなく、稲城市、東久留米市、島嶼地区を除いた24市3町1村です。

 平成18年4月1日現在、222台の救急車が走り、救急隊員は3834人、救急救命士は1123人います。

 都消防庁の脳血管疾患の分類は、くも膜下出血、脳出血等(脳溢血、脳内血管破裂、脳動脈瘤破裂、頭蓋内出血など)、脳梗塞等(脳塞栓、脳底動脈塞栓、頸動脈狭塞、椎骨動脈血栓、脳血栓、脳軟化など)、脳虚血(一過性脳血管疾患を含む)、高血圧性脳症、その他の脳血管疾患(脳底動脈不全、頸動脈不全、脳動脈硬化、脳動脈瘤、脳動脈炎のほか、前記の後遺症など)に分けています。外傷性は除きます。これらは医師への引き継ぎ時の初診時の傷病名を基準にしています。

 搬送したときに、医師に書いていただいた傷病名です。めまいなどのサインもあります。そういったものは除いています。そのようなことから脳血管疾患は、実際の何倍かはあるのではないかと思います。

 平成17年の転院を除く搬送人員は60万7724人で、このうち2万3220人が脳血管障害でした。
 脳血管障害の搬送は、冬場に多いです。また、明け方から午前9時台にかけて急激に増え、夕方も多くなっています。

 脳血管障害の傷病名別では、脳梗塞等が1万1479人(49.4%)で最も多く、脳出血等が3710人(16.0%)、くも膜下出血が1221人(5.3%)、その他が6810人(29.3%)となっています。

 傷病ごとの程度は、くも膜下出血の37%が重篤、47%が重症です。脳出血等では17.2%が重篤、37.6%が重症です。脳梗塞では重篤・重症が12.4%、中等症が77.4%となっています。

脳血管障害救急搬送の特徴
・脳血管傷病者は増加傾向にあり、冬場に発生が多い。
・脳血管障害者は都内各医療圏で発生している。
・早朝から急激に増加し、夜間帯にかけて現象しているが、深夜帯でもゼロにならない。
・搬送全体に比較し、重症度が高い。
・脳梗塞は、現場活動時間は比較的長く、年齢は65歳以上が約8割。
・深夜〜朝方までは重症度が高い。
・救急現場での症状は様々であり、意識障害がある場合に重症化が見られる。


 年齢別の脳梗塞は、4つに分けてみましたが、29歳以下が0.2%、30歳〜40歳が3.9%、41歳〜64歳が18%、65歳以上が79%となっています。搬送についても統計書と同じ傾向があります。

 症状は、脱力、ぐったりした症状が多い、ほとんどは中等症です。重症度が高い人は意識の以上を訴える人が多いです。

 24時間いつでも連絡すれば診てくれる病院、各行政区に24時間対応可能な施設を整備されて、早く専門の病院に搬送し、早く見てもらうことが大切だと思います。





(2) 東京都の脳卒中急性期医療を考える
        脳卒中拠点病院の現状と問題点

         長尾毅彦(東京都保険医療公社荏原病院神経内科医長)


 荏原病院は、世田谷区、品川区、目黒区、大田区の4区から搬送されてくる患者さんがほとんどです。年間4百人弱、1日1人の脳卒中の患者さんが搬送されてくるということになります
 日ごろの経験から脳卒中の拠点病院のあるべき姿を考えていきたいと思います。 

荏原病院 総合脳卒中センター
急性期脳卒中 診療実績
2005年4月〜2006年3月
脳梗塞     279例
脳出血      80例
くも膜下出血   22例
脳卒中総数   381例


 脳卒中拠点病院の条件としましては、スタッフと設備という2つの大きな柱に分けられると思います。

 スタッフは内科医と外科医が強調して診療にあたることが必要です。血栓溶解療法に慣れている医者がいること。スタッフとしては大きな条件です。

 設備としては、CT、MRIの24時間画像診断ができ、なおかつ24時間血液検査が迅速にできることが血栓溶解療法を行うときに大事な要件となります。また、非常にデリケートな治療ですので、集中治療室に準じた設備が整えられていることが脳卒中の拠点病院の最低条件だと思います。

 血栓溶解療法に関しては、病院に着いてから1時間以内に治療を始めなければならないという状況の中で考えますと、患者さんの症状を的確に把握することが大切です。速やかに情報を収集して、画像診断、血液診断が原則40分以内に出せるかということにありますし、治療をしたあとに厳重な患者さんの監視体制ができること。特に血栓溶解療法に関しては大事な条件です。 

 もう一つ忘れていけないのは、この患者さんに治療可能かどうか、適切に判断することが最も求められていることです。そういう意味での医者の責任は非常に大きいと考えています。

 このような条件を満たしている病院は、第一に血栓溶解療法ができる施設ということで考えますと、専門的には一次脳卒中センターとして位置づけにしております。
 専門の職員がすべて配備されているところを総合脳卒中センターとして位置づけられている考えられます。
 総合脳卒中センターの周りに一次脳卒中センターが複数配備されていることが求められます。

脳卒中拠点病院の条件
スタッフ 脳卒中専門医が常駐している
 脳神経外科医
 神経内科医
血栓溶解療法に習熟している
設 備 24時間画像診断が可能
24時間血液検査が可能
集中治療室が整備されている


 脳卒中の専門が常駐しているかどうか。必ずいるということが大事です。脳神経外科医、脳神経内科、脳血管内科などと呼ばれる、内科系の医師と外科例の医師が連携して治療することが非常に大事です。

 よく脳卒中の患者さんは異口同音に「手術の必要はないですか」と聞く方が非常に多いです。しかし、くも膜下出血の患者さんを別にしますと、脳出血、脳梗塞の患者さんで手術が必要なのはほんの一握りしかいません。ほかの患者さんは実際は薬を使うということで内科的な治療が中心になります。

 もう一つ強調しておきたいのは、脳卒中の患者さんは病気の塊です。特に内科系の疾患をたくさん持っています。内科的な疾患も診る必要があります。今後は、神経内科の役割が大きくなってほしいと思います。

 もう一つ大事なのはリハビリテーションです。リハビリテーションは、理想からいえば、入院した日からすぐにリハビリを開始することが理想的です。
 リハビリといってもいろんなリハビリがあります。理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などいろんな職種の先生がみえます。

 患者さんに見合った、なるべく早い時期から始めることが大事です。病院から自宅に帰るまで、切れ目なく、理想のリハビリができるように態勢を整えることが大事です。

 東京都の場合、急性期病院はたくさんあるのですが、長期のリハビリ病院が少ない。そうなると急性期病院からリハビリ病院に移せない。十分にリハビリテーションができません。
 東京都では、急性期病院はリハビリテーションの要素をもっていなければスムーズなリハビリテーションの治療ができないということになります。

 また、脳以外の病気を治すことが必要です。循環器や糖尿病の内科医などの病気を治した上で次の対策を練らなければ、次の再発の予防ができないのです。

 基礎疾患、持病の管理が大切です。予防の管理が非常に大切です。運ばれてきたときから、こうした持病の治療もしなければなりません。実際には総合病院でいろんな先生のお世話になって、脳だけでなく、広い範囲で治療を決めなければなりません。

 脳卒中の急性期の治療は、いろんな職種の先生、看護師さん、リハビリの先生、栄養士さんにお世話になります。これが一番の究極のチーム医療になるわけです。このチーム医療のことをストロークユニットと考えています。
 神経外科、脳外科医が1人だけ頑張って治療する病気ではありません。

脳卒中拠点病院からの提言
一般都民の方々への提言
 1.脳卒中は1秒を争う病気であると認識する
 2.脳卒中の症状を理解する
 3.地域の脳卒中センターの所在を確認する
 4.脳卒中の危険因子の治療を徹底させる 


脳卒中拠点病院の条件
血栓溶解療法を速やかに行うための条件
病院到着から1時間以内に治療を開始する
 ・患者さんの病状の的確な事前情報を得る
 ・必要な画像診断、血液検査の結果が40分以内に出せる
 ・治療開始後の厳重な患者さんの監視体制
治療可能かどうかの適切な判断ができる


 東京都は、血栓溶解療法を使っているところは、人口比では非常に少ないです。改善の余地はあります。
 東京都の場合は、急性期病院の中にリハビリの先生を持っていることが理想的です。

 脳卒中は発症予防、ならないための治療、予防の治療も大きくクローズアップすべきです。
 どういうときに脳卒中かを理解することが大事です。ある大学病院の調査では、脳梗塞で入院した半分以上の人が自分が脳卒中とは思わなかったということです。来てみて脳卒中ということでびっくりしたということです。脳卒中はなじみが薄いということになります。

 突然起きたということは一刻を争う病気です。脳卒中という病気をぜひ勉強していただきたい。
 また、どういう病院が脳卒中に力をいれているかということを知識の中に入れておいていただきたい。
 脳卒中には持病があります。脳卒中になってからどうするかではなく、脳卒中にならないようにするのが一番です。なってしまったら速やかに拠点病院に行って、治療をすることです。

 病院側の医療システムの問題点も改善して、1人でも早く患者さんが家庭に帰れるように頑張っていきたいと思います。皆様方のご協力もお願いいたします。





(3)急性期リハビリの現状と問題点

         鈴木禎(東京逓信病院リハビリテーション科部長)


 急性期リハビリの必要性、回復期リハビリの連動、患者の状況について。

 脳卒中とは、脳の一部、全部が血液循環障害、あるいは出血などによって一過性、持続的に障害された常態です。
 脳卒中とは、大まかにいって脳梗塞、脳出血、くも膜下出血です。

 脳卒中にはリハビリが必要です。脳卒中のリハビリの種類は、PT(理学療法)、OT(作業療法)、ST(言語療法)があります。
 PTは、下肢の筋力強化、拘縮予防、麻痺の改善、起立歩行訓練、補装具の選定です。
 OTは、上肢巧緻性向上、日常生活動作訓練、家事動作訓練、高次脳機能訓練、家族への介助指導です。
 STは、失語症訓練、構音障害に対する訓練、嚥下訓練です。このように リハビリといってもいろいろあります。

 脳卒中の急性期リハビリは、発症直後からに3週間の時期をさします。全身管理をしながら、合併症や廃用症候群の予防をしていきます。

 廃用症候群とは、体をしばらくの間動かさないと、体が固まってしまう、もしくは筋力が落ちてします。たとえば、1週間体を動かさないと筋力が5%〜10%萎縮されるといわれています。
 
 回復期は、発症2、3週間から3カ月前後をさします。機能回復訓練、ADL訓練、社会復帰の訓練をします。

 維持期は、発症からだいたい3カ月、長い場合でも6カ月です。その期間を過ぎると機能障害の回復度合いは落ちてきます。機能維持、再発予防のための訓練をします。

 急性期からリハビリを行うのは常識になっています。

 廃用症候群を予防し、日常生活動作向上と社会復帰を図るため、十分なリスク管理の下に、急性期からリハビリを行うことが必要です。

 ではなぜ急性期からリハビリが必要か。急性期からリハビリは、発症3カ月後の機能障害や日常動作が改善されます。リハビリ開始が遅れると廃用性筋萎縮が顕著なります。
 一方、リハビリを早くから開始することで意識障害や麻痺の進行の頻度を増加させない。再発リスクの増加もみられません。

 発症初期から、ベッドサイドからでも早くからリハビリを行うことが必要となってきます。
 しかし、やみくもにリハビリをやればいいかということではなく、個別に検討すべきことがあります。急性期に起こりやすい合併症など、注意を必要とします。

 回復期リハビリの連携について。
 急性期病院でリハビリ後、退院のばあいもありますが、さらにリハビリが必要な場合はリハビリ病院一般病院りリハビリ科に入院し、リハビリを継続します。
 リハビリ病院に入院するには注意することがあります。まず初めに入院条件があります。しかし、希望すればすべての患者さんが入れるわけではありません。医療保険の仕組みで発症2カ月以内など、病症によっては入院期間に限りがある場合があります。一部の患者さんですが、重度の障害が残って改善の見込みが少ないなどの場合、長期療養型病院に入院する場合もあります。

 当病院は急性期病院でありながらリハビリ専門病床も備えていますので、リハビリを続けられます。
 急性期後どのうようなリハビリをするかには、いろいろな経路があります。
 急性期病院では、ありまにもリハビリの専門医が非常に少ないという問題点もあります。

 リハビリ専門病院の入院制限には、理由があります。発症してから長期間経過している場合、機能向上が著しく期待できるのは発症から3カ月といわれています。この後は、リハビリをしても機能回復が難しいという点があります。

 また、積極的リハビリが困難な場合があります。長期間経過していないくても、意識障害があり、意思疎通が困難な場合があり、リハビリ効果が期待できない場合は、リハビリ入院が制限される場合があります。

 在宅復帰困難な場合もあります。回復期リハビリの受け皿が少ない現状もあります。リハビリで回復の高い方を優先しなければいけない状況もあります。
 急性期治療を終えた患者さんは様々です。急性期の間から、個別の見込みを立てることが大切です。



講演・シンポジウム

◆ 都民医療学習セミナー「都民と医療機関の相互理解を深めるために〜医療を取り巻く現状」 (2005.2.2)

◆ 「東京の介護保険を育む会」公開シンポジウム−高齢者が介護を受けながら地域で暮らしていくには(2005.1.27)

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