都民医療学習セミナー 「都民と医療機関の相互理解を深めるために〜 医療を取り巻く現状」
基調講演
東京都医師会理事 今村 聡 (地域医療担当)
東京都医師会に関し、みなさんがお住まいの区・市には医師会があり、その上に東京都医師会があります。それぞれ大学にも医師会があり、その方々とも一緒に仕事をしています。東京には現在2万人以上の医師会員がおり、診療所の医師と病院勤務の医師は半々です。
今の医療の仕組みというのは、必ずしも患者さんのためにできているものではなく、分かりやすくなってはいません。健康保険に関してもさまざまな種類がありますが、よく分からない部分もあるかと思います。また、トラブルに関してもその仕組みの中で起こっているケースも少なくないのです。例えば入院時にすでに退院の話をされたとかは、医療の仕組みの中で仕方なしに起こっていることもあります。こういうことをみなさんに知っていただき医療機関、医師と患者とのコミュニケーションがスムーズになることが大事だと思っています。
「賢い患者さんのお医者さん選び」 病気をしないことを第一に、自分自身が「からだの責任者」であるという自覚を持つことが大切です。睡眠不足、暴飲暴食、ストレス、喫煙を避け、適度な運動をするといったことが基本ですが、不幸にして病気になった場合は医療機関にかかるということになります。
医療機関のひとつとして「かかりつけ医」があります。あまり大きな病院の先生をイメージしてはいません。気楽に健康の相談ができるような「パートナー」であり、今のあなたの症状を専門医と結びつける「仲人」あります。さらに家族を健康に導く「カジとり」としてイメージしてください。
また、「からだの責任者」として1週間前、1カ月前の自分の状態がきちんと把握でき、安心して信頼できる医療とのかかわり方をつくっていくことが必要です。 最近では大病院は長い待ち時間を解消するために、長期処処方といって同じ薬を1カ月分出すことが可能になってきています。薬によっては2カ月もあります。そういった意味で「かかりつけ医」というのは必要になってくるのです。
「かかりつけ医」とは、地理的に近くにいて、どんな病気でもいつでも診てもらえる医師を想定しています。この「かかりつけ医」を基点に、地域医療機関との連携で、「いつでも、どこでも、誰でも適切な医療を受ける」ことが可能になります。インフォームドコンセントといいますが、自分の病気をよく理解してもらうことも必要です。説明をするということは医療上、大切なことです。こういったことは、まちの診療所でないと難しいと思います。
身近で気軽な相談がいつでもできるためには、まず「近い」ことが重要と考えられます。
病気かなと思った時に、まず、どんな病気でも真っ先に相談できるお医者さんがいれば、状況に適した医療がスムーズに受けられます。
病気は24時間365日、いつでもどこでも発生します。「かかりつけ医」を基点に、地域医療機関との連携により、「いつでも、どこでも、誰にでも適切な医療を受ける」ことが可能になります。
「かかりつけ医」は、患者の疑問に率直に丁寧に答え、納得のいく治療方針を検討してくれます。また、患者さんの生活を支援するために、地域の医療・保健・福祉機関へのコーディネーターの役割も担ってくれます。
「かかりつけ医」は、高度の診療機能を持つ専門病院との連携で、それぞれの機能を分担。病状に応じてふさわしい医療機関、医師を紹介してくれます。
さて「かかりつけ医」はどうやって探すのかということですが、相性はとても大切なことのひとつです。 地域のさまざまな健康診断に積極的に参加して探すとよいでしょう。ちなみにアメリカでは乳がんの検診を受けている人の割合は女性の8割から9割です。日本の受診率は12〜13%と低く、東京では7〜8%と最悪の割合です。 そういう意味では「かかりつけ医」を見つけておくのは非常に大切なことです。東京都の医療検索システム「ひまわり」を利用するのもよい方法だと思います。
これからの地域社会では、どんな医療が望まれるのかというと、「例え病気をしても、すべての人々が人間としての尊厳を尊重されつつ、住み慣れた地域で最愛の家族と地域の人々に囲まれて、いつまでも安心して暮らせること。これらを、医学を通じて実現する」ことです。在宅医療には、地域医療の連携システムにおける「かかりつけ医」の支援が重要になってきます。
次に病気には急性期と慢性期というのがあります。病気によって医療機関の選び方が多少違ってきます。 急性期とは、病状が急に変化している状態で手術や検査を早期に必要とする病気です。命にかかわる心筋梗塞や脳梗塞、重症な肺炎などです。 慢性期とは、病状が慢性的に続く経過の長い病気。生活習慣病に代表される病気です。在宅で診る病気や終末期で診る病気も含まれます。慢性期の病気が急に悪化して、急性期になることもあります。
病院の選び方というのは、地域医療の仕組みの中にあります。「かかりつけ医」というのはプライマリ・ケア(初期診療・治療)を担当します。「かかりつけ医」の紹介で病院へ行き、一般的な入院治療、専門的な検査・治療を行うこともあります。病院というのはいろいろあり、特定機能病院、地域医療の中核的な病院、さらに普通の病院と分けられています。 特定機能病院とは、@高度の医療の提供、開発、研修の能力を有することA所定の診療科目のうち10以上の診療科目を有することB病床数500床以上であることC厚生労働省令で定める員数の医師、歯科医師、薬剤師、看護師その他従事者を有することD集中治療室、診療や病院の管理および運営に関する諸記録などを有することを条件とし、東京都内では13の病院があります。
1.国立がんセンター中央病院 2.東京慈恵会医科大学附属病院 3.東京医科大学病院 4.慶応義塾大学病院 5.東京医科歯科大学医学部附属病院 6.順天堂大学医学部附属順天堂病院 7.東京大学医学部附属病院 8.日本医科大学附属病院 9.帝京大学医学部附属病院 10.日本大学医学部附属板橋病院 11.昭和大学病院 12.東邦大学医学部附属大森病院 13.杏林大学医学部附属病院
1の国立がんセンター中央病院以外はすべて大学病院であます。高度な医療ということがキーワードになっています。「高度」というのは、同意の上ですが治験、試薬なども含まれます。また、高度な3次救命救急などの使命も帯びているのです。
地域医療支援病院とは、地域の医療を支援するということで、@他の病院または診療所から紹介された患者に対し医療を提供する体制が整備されていること(患者紹介率:80%以上)A施設や検査機器などを共同利用するための体制が整備されていることB救命救急を提供する能力を有することC地域の医療従事者に対する研修を行う能力を有することD原則として200床以上の病床を有することE集中治療室などの必置施設を有することが条件で、東京都内では、東京都保険医療公社が運営する東部地域病院と多摩南部地域病院の2病院です。東京都保険医療公社が運営する医療機関は他にも多数ある。紹介率は、年々上がってきていますが、80%以上の紹介率が得られないために、地域医療支援病院に認定されていません。地域医療支援病院を増やすためにも、みなさんに「かかりつけ医」を持ってほしいと思います。
そのほかにも高い機能を持った病院がありますので、利用してください。日本は医療の選択が許されていますので、その面は恵まれていますが、その反面地域医療の特性が生かせないという難点もあります。それは患者さんの判断に任されていますが、難しいことだと思います。「かかりつけ医」の積極的な活用が望まれます。医療の連携は大切です。「かかりつけ医」、「病院」、「地域医療の中核を担う病院」、「特定機能病院」というつながりを今、医師会や東京都ではスムーズにいくよう努力している最中です。
療養型病床群とは、役所言葉ですが、治療でなく生活の場として、スペースが広く長期療養にふさわしい環境を有するものとして許可を受けた病床です。介護保険が始まってから特に整備されました。療養型病床群の病床には、介護保険と医療保険の適用部分があります。日本は海外に比べシステム的に入院日数が長いのは、在宅介護の意識が薄いからです。こういった社会的入院が医療の加算を招いています。在宅ケアを念頭に置いた上での介護保険の適用部分も設置されているのです。 介護を中心とした地域システムのイメージは、訪問介護と施設介護の2つに分けられています。施設もリハビリを兼ねたショートステイと昔からの「老人ホーム」などに分かれています。これに医療が加わったものが、療養型病床です。この病床は普通の病院の中にもあります。この場合、利用者はきちんとその事実の説明を受けて理解するべきだと思います。
在宅医療は、療養型病床の次のステップをイメージしてください。訪問看護師などを活用しています。 在宅医療の各種医療内容
・在宅酸素療法 ・在宅持続陽圧呼吸療法 ・在宅人工呼吸 ・在宅自己腹膜灌流 ・在宅中心静脈栄養法 ・在宅成分栄養経管栄養法 ・在宅癌末期疼痛管理
在宅医療は、生活習慣病に代表される慢性期の病気、在宅で診る病気、終末期で診る病気などに適応されています。このケースから急に悪化して、急性期になることもあります。
「生活習慣病」とは、最近言われるようになりましたが、これまでは「成人病」と言われていました。食習慣や喫煙、飲酒などの生活習慣が、その発症や重症化に関係していることからそうなったのです。私は開業して10年になりますが、血糖値の高い人は非常に多いです。そのほとんどが食生活が原因です。糖尿病の予備軍と言ってよいでしょう。こういったことが、肥満や高血圧、高脂血症になり、生活習慣病であるがん、脳卒中、心疾患、糖尿病、歯周病につながっていくのです。この場合、ほとんどが動脈硬化という血管が詰まったり、切れやすい状態になっています。その原因は、先ほどの食習慣や運動習慣、喫煙、飲酒などの「生活習慣」が原因となっています。
(文責:福祉ネットワーク情報)
今村先生の講演のあと、インターネットの医療機関の案内サービス「ひまわり」がありました。 自分の「からだの責任者」として「かかりつけ医」を持ち、各種病院を使い分け、東京の医療機関の機能を上手く付き合っていってほしいと思います。医療機関を探す方法としては、東京都の医療検索サイト「ひまわり」もあります。
◆第2回東京都脳卒中市民公開セミナー「脳卒中の急性期医療」(2006.10.1) ◆ 都民医療学習セミナー「都民と医療機関の相互理解を深めるために〜医療を取り巻く現状」 (2005.2.2) ◆ 「東京の介護保険を育む会」公開シンポジウム−高齢者が介護を受けながら地域で暮らしていくには(2005.1.27)
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