地域で支え合う介護コミュニティ新聞
Information of a town of the welfare
コラム     本の紹介     2008年1月6日更新

「東京の介護保険を育む会」 公開シンポジウム
      高齢者が介護を受けながらも地域で暮らし続けていけるために

2005年1月27日(木)  東京都庁第一庁舎


参加者紹介
コーディネーター
大森 彌(わたる)
千葉大学教授・東京大学名誉教授 東京の介護保険を育む会 座長
専門は行政学、地方自治論。介護保険制度の骨格を議論した厚生省(当時)の「高齢者介護・自立支援システム研究会」座長を務めた。NPO法人地域ケア政策ネットワーク代表理事。

基調講演1
藤木則夫
厚生労働省老健局介護保険課長
1980年厚生省入省以来、老人福祉、公衆衛生、医療保険、大臣官房(法令審査・会計)、環境保全、地方自治体出向、看護、内閣法制局での法令立案、年金資金運用等の諸分野を歴任。2003年秋より現職。

基調講演2
栃本一三郎
上智大学教授・放送大学客員教授・国立政策研究大学院客員教授 東京の介護保険を育む会委員
専門は社会福祉政策研究、人口減少社会における地域社会政策のあり方について、ドイツをはじめ欧州の介護についても詳しく、市民の視点・現場から政策、制度を提起している。

パネリスト
増田時枝
東京都老人クラブ連合会副会長 東京の介護保険を育む会委員
高齢者が活き活きと生活できる地域づくりを目指し活動。長く青少年育成活動にも従事。練馬区老人クラブ会長を経て、現職。

高木俊男
東京の介護保険を育む会 委員(公募委員)
民間企業の役員を歴任、現在も企業人としても現役であるが、実母の介護の実経験から、介護保険制度に強い関心を持ち、育む会委員公募に応じ、参加。

難波 眞
複合介護施設和楽 施設長
現場の視点から、在宅介護を支えるための仕組みのあり方を提起、実践している。国保連介護給付費審査委員会委員。

石田光広
稲城市介護保険担当課長
老人保健福祉計画官として2001年から2年間厚生労働省へ出向。保険者機能強化、地方分権、まちづくりの視点から様々な積極的な提案を行う。

竹内孝仁
国際医療福祉大学大学院教授 東京の介護保険を育む会 委員
日本医科大学教授を経て、2004年から現職。特養や在宅ケアに長年関わり、医療・福祉の連携、ケアマネジメントのあり方を提起。全国老人クラブ連合会評議員・同「健康を進める運動委員会」委員長、パワーリハビリテーション研究会会長。



公開シンポジウムの開催にあたって

帆刈祥弘 東京都福祉保険局次長


 平成12年4月に開始されました介護保険制度はまる5年が経とうとしております。この間、介護サービスは発生してきたさまざまな問題に対して、「東京の介護保険を育む会」においてケアマネジャーや医師を通して、介護事業者や主婦が代表して検討を行っている。本日は、千葉大学教授・東京大学名誉教授の大森彌先生に座長をお願いして、きょうは東京の大都市特性など幅広く講演、パネルディスカッションをしていただきたいと思っています。特に介護保険について住居や環境においては、それだけで解決できる問題ではないと思っていますので、介護保険制度改革のひとつの問題として取り上げていただきたい。本日、この場をお借りして提言させていただく。この問題について、今日は皆さんに理解を深めていただきたい。



基調講演1「介護保険制度のめざす方向について」

厚生労働省老健局介護保険課長
藤木則夫
 介護保険のこれからについて語っていきたいと思います。
 まず見ていただきたいのが、「人口ピラミッド」です。このピラミッドが2000年、2050年となるにつれ、65歳以上の人口が全体の比率に対して高い「ツタンカーメン型」になると推測されている。この中で要介護になる人口比率も高くなると予想される。しかも「人生100歳」というのが定説になりつつある。これからのお年寄りはしっかりしていなければならない。介護保険が始まってから5年がたっている。この5年の間に軽度要介護者の問題など、今回の制度改正において、再検討するべき点が出てきている。そして「人生100歳」に耐えうる健康で生きがいを持っていくといった課題が生まれてきている。

 介護保険制度はあくまで保険である。税金を割り当てている。6兆円の保険料は税金で賄っている。お金を尊厳に替えていくということだ。よりよい形で替えていくべきだと思う。

 そのためにはキーワードが3つある。ひとつは介護予防だ。現実いまの要介護状態の割合は重度者よりも要支援や要介護1の軽度者の比率が高い。支援の充実、それに加え、転倒防止、栄養指導などの地域支援が必要だ。これは新しい考え方といえるだろう。これまでの介護保険は「痴呆が悪くならないように」ということだが、これからは介護は、支援という形で変わっていく。個の尊厳を守る。「できることをひとつづつやる」ことがテーマだ。

 二つ目は給付の重点化・適正化の推進だ。海外のモデルを手本にやっていく。サービス適正化のためにケアマネジメント、事業者規制、要介護認定の見直し、情報開示の標準化をする。

 三つ目は地方分権の推進で、新たなサービス体系の確立として、地域密着型サービス(仮称)と地域包括支援センター(仮称)の創設をする。また、保険者による円滑な制度運営の見直しとして、都道府県知事の事業者指定に当たり市町村長の関与と、事業所への調査権限を強化する。

 被保険者・受給者の範囲をめぐる問題は、継続して検討していく。平成16年度9月以降の審議の結果は、すべての人にサービスの給付を行い、併せて保険料を負担する層を拡大することにより、制度の普遍化を目指すべきという意見が多数であったが、一方、被保険者・受給者の範囲の拡大については、きわめて慎重に対処すべきという声もあった。

 今後、被保険者・受給者の範囲に拡大に関連した制度改正を実施するとした場合、かなりの準備が必要である。一方、政府の基本方針で介護保険制度の普遍化については、これらの動向を十分に踏まえる必要がある。

 介護保険を支える「専門職」と「地域」として、医師、看護師、栄養士らに加え、「地域」というプラットフォームと呼ばれる住民ボランティア、「地域デビュー」をめざす団塊世代、民生委員、高齢者クラブ、行き場の見つからない若者たち、企業の社会貢献という地域の連携をきちんととっていきたい。


基調講演2「ご近所の底力は実現するのか」

上智大学教授・放送大学客員教授
栃本一三郎

 「ご近所の底力は実現するのか」ということだが、東京都の人口減少・高齢者都市集中社会を念頭において介護体制作りを進めたい。

 日本全体としても考えて、藤木課長のお話のように、人口構成はどんどん変化している。

 「東京都の福祉改革ステップ2」として、地域で自立して、多用な住まい方の実現をし、東京の活力を生かすことが大事だ。このパターンを海外でも通用するものとして構築したい。慶応大学の金子先生がかつて言っていたが「地域の脆くても、ウェットでない、でも都市流儀の関係をつくっていく」ことだ。長野県でも長野モデルがあるが、それが東京で通用するかというのはわからない。

 ヒューマン、ソーシャル・キャピタルというが、原則「自分のことは、自分でできるようにする」ようにしていくということだ。時間をかけてやっていく。

 地域ケアを絵に描いた餅にしないためには、地域としてのきちんとした事業計画の目標をもつことだ。そこには当然、当事者がかかわってくる。その人たちがどうのように地域で活動していくかということだ。その情報のネットワーク作りも大切だ。その上で、「徹底した確実な専門職行政」の下支えが必要になってくるだろう。これから介護サービスの第三者評価が実施される。そうすれば、事業者の淘汰もされる。

 それを踏まえて、丁寧に介護保険事業計画作りを地域の専門家・市民・行政と協働して進めるプラットフォーム作りが急がれる。あくまで行政は調整役となりたい。行政もふくめ、サービスの評価は必須だ。それと、地域の大学・専門学校の活用・連携もする。

 行政としては、きちんとした仕組みを作る。媒体的なことは都、市町村は多様性を確保する。たとえば、苦情・事故過誤情報の集積活用センター、情報開示、第三者評価などだ。地域密着型サービスとして実施する。

都市としては、階層の硬直化、人の尊厳の確保、高齢者の両極分解など、介護、福祉の問題を「ご近所の底力」で解決していきたい。


パネルディスカッション

「高齢者が介護を受けながらも
       地域で暮らし続けていけるために」

増田時枝
 東京の介護保険を育む会委員・東京都老人クラブ連合会副会長

 私は、本来東京都練馬区の老人クラブ連合会の会長だ。クラブのテーマは、介護を受ける側としての尊厳をどのように守っていくかである。また本人が何をしたいのか、どう動くのかということを把握してそのサービスを提供することであるが、実現されているケースが少ない。介護する側は、される側を同じ目線でものを見ていただきたい。

 在宅介護の場合、主婦・お嬢さんなどの女性が24時間体勢でそれにあたるわけだが、知識・認識不足から不安がとても多い。そのため家庭のリズムも狂いがちだ。彼女たちの状況を理解してあげることも大事であろう。在宅介護は、介護を中心とした家族の健康が大切であろうと考える。明るく、楽しく介護をしていかなくてはならない。そのためのサービスもどんどん利用するべきである。同時にサービスの質の向上も求める。介護される側と、する側に健康と心の張りを援助するようにしてもらえたらと思う。

 練馬区では筋力トレーニング、訪問ボランティアなどの活動も積極的にしている。ぜひとも練馬区民の方々には老人クラブに入っていただきたい。

 また、地域に溶け込むことによって、精神的な援助を受けることも必要だ。実は、昨年数カ月だけ、介護の経験をした。その時、周囲のお世話になることができ、よい環境だった。それでも見送った後、ひどいうつ鬱状態になり、再び自身が周囲のお世話になることとなった。これは、自分が老人クラブの会長としての立場上とても恵まれた。


「高齢者が介護を受けながらも地域暮らしつづけていけるためにパネリストとして申し述べたい事」
高木俊男  東京の介護保険を育む会公募委員 
 母親が80歳過ぎて倒れ、介護を経験した。
 「地域包括ケア」について、私は「施設重視派」である。「地域」においても施設の必要性は変わらない。「在宅介護の限界」は2年である。その問題点に家族介護は許容範囲が狭く、完全介護を意識しすぎる。また、家族がヘルパーさんの目を気にするということである。施設介護の意義は、入居により介護者と家族の間に「一定の距離」を作り、それが肉親間の尊厳、人間の尊厳を守ることにつながる。地域包括ケア体勢の充実は、在宅介護期間の引き延ばし施設需要は落とすが、現在では十分とはいえぬ24時間365日体体制ケアの完備が必要。

 「介護予防」ついては、「廃用性(廃用症候群)」*という言葉にとって、「家事介護的な自立支援」を本当に必要とする人たちへのサービスが疎かにならないよう都が監視してほしい。最も言いたいことは、高齢者が住みよい街を作るべき。「歩きやすい」街を作り閉じこもりを防ぎ、脳細胞の活性を促し、ひいては認知症防止につなげるべき。

 警察、国交省、文科省など一丸となって取り組んでいただきたい。東京都は、こういった視点を大切にして「介護問題」に取り組んでいただきたい。

 ※廃用症候群とは?「下肢機能の低下」、「栄養状態の悪化」や「閉じこもり」などを原因として、徐々に生活機能が低下していくこと。


「地域包括ケアに向けた挑戦」
難波眞  複合介護施設 和楽施設長 
 老人保健施設と、グループホームの運営を行ってきた経験から、地域における社会資源のあり方を考える。介護保険が改正され、介護予防に重きが置かれるようになるが、その中で家族の介護負担の軽減と、高齢者の自立支援が問題だ。

 介護の三本柱は、居住所、人手、経済力であるそれらを賢く利用することで地域にある社会資源(老人保健施設とグループホーム)が生きてくる。そのためにはケアマネジャーの存在は重要だ。

 東京という立地条件の中でどのように暮らせばよいのか、介護を受ける側も提供する側も共に育ってほしい。自助、互助、共助によって「ぼけても当たり前に暮らせる街」を作ることがこれからの課題だ。


「地域包括ケアに向けた稲城市の取り組み」
石田光広  稲城市福祉部介護保険担当課長 
 自治体にとって、住民が要介護状態になっても安心してその地域で暮らし続けることができる「地域づくり」が要重要課題である。稲城市では、介護保険制度を地方分権の試金石として「介護のまちづくり」を実施している。第3期(平成18年度から平成20年度まで)の介護保険事業計画は、各自治体ごとに地域特性を踏まえた2015年の街の姿を描き、住民の期待にどう応えていくかがポイントだ。

 稲城市を含めた15自治体の「介護のまちづくり特区」共同提案の意義と成果は、地域政策課題の解決のために、保険者機能強化の提案を行ったが、特区としてでなく、今回の介護保険制度改革の中に組み入れられた。介護予防マネジメントおよび介護予防事業を実施する。日常生活圏設定と地域密着型サービスとして、3〜4つの生活圏域を想定し、地域密着型サービスの整備を目指す。

 稲城市の地域密着型小規模多機能サービスへの整備の挑戦としては、自治体として外部から要介護者を呼び込む政策を立てたが、これには様々な障害があった。現在は「痴呆ケア対応小規模多機能型サービス調査研究事業」として、日常生活圏域をモデル的に設定し、その区域の介護ニーズ、地域資産等を推計し、かつ地域課題の整理をし、そのサービス等への保険者の関わり方を提言した。サテライト型特別養護老人ホームを特区として、小規模多機能型のホームの整備を目指す。この動きは「まちづくり」として挑戦していく。


「介護予防の重要性を改めて考える」

竹内孝仁
  東京の介護保険を育む会委員 国際医療福祉大学大学院教授
 高齢者の健康は社会の財産である。
寝たきり、認知症は閉じこもりから起きる。その予防策として「毎日外出する」「地域で親しい人をつくる」「雑談をする」「物忘れを恐れない」ことが重要と考える。
 介護予防を発達させ、後世によい時の流れを残したい。


講演・シンポジウム

◆第2回東京都脳卒中市民公開セミナー「脳卒中の急性期医療」(2006.10.1)

◆ 都民医療学習セミナー「都民と医療機関の相互理解を深めるために〜医療を取り巻く現状」 (2005.2.2)

◆ 「東京の介護保険を育む会」公開シンポジウム−高齢者が介護を受けながら地域で暮らしていくには(2005.1.27)

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